地域別砂地農業が抱える問題とその対策、将来展望

総合司会:日本学術会議地域農学研究連絡委員会委員、     
新潟大学名誉教授 廣田 秀憲


はじめに

 いま、日本の経済に先が見えない。農業は、そして農家はどうなるのか。国民をあげて21世紀を生きる道を探す必要がある。

 砂丘の未来をどう描くか、今日のシンポジウムはこうした背景の中で真剣な討議を企画したものである。白砂青松という。古来、先人はこの美しい海岸の美を愛してきた。
 海岸の砂丘が農業的に利用されるまでに長い年月を要した。17世紀になって砂防のための努力がなされ、クロマツの防風林がつくられ、風下の畑を保護して作物の栽培を始めた。
 内陸部の、壌土を中心とした水田や畑とは違って、砂の特性を生かした砂丘の利用法を農家は長い年月をかけてつくり出した。
 1960年代になって、スプリンクラーの普及が砂丘の農業を一変させた。以来30年を経て今日のような、マルチ栽培やハウス園芸による高品質、高収益の集約的な園芸の特産地ができた。
 しかし、砂丘の農業には、連作障害、病虫害、農薬や肥料の多投による地下水の汚染など解決すべき問題が多い。

 日本学術会議第6部、地域農学研究連絡委員会は、今回徳島市を会場としてシンポジウムを企画し、高度に発展してきた砂丘農業の明と暗の部分を科学的に解析し、その中から将来の方向を探ることとした。
 まず、研究連絡委員会の側から
 北海道大学大学院 農学研究科 堀口 郁夫教授と広島大学生物生産学部 安藤 忠男教授にそれぞれ気象学、土壌肥料学の立場から基礎的な側面を平易に解説していただくことにした。
 また、砂丘農学の生産現場における多年の研究の成果をもとに、次の2氏に将来の展望を語っていただくことにした。
 青森県畑作園芸試験場 中島 一成場長、鳥取大学農学部 高橋 国昭教授にはこの委員会の企画に協力いただき、深く感謝したい。

 この企画が生産農家および関係の各位にいささかも刺激になればと願い、あとの討論の時間の中で熱心に質疑応答をしていただくよう、願うものである。



平成10年7月22日開催「日本学術会議第17期第1回地域農学研究連絡委員会講演会」テキストより転載